Y-Classic こども青少年クラシック音楽普及プロジェクト:公演レポート《仙台クラシックフェスティバル2015》


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 公演レポート◉                                 
仙台クラシックフェスティバル2015
2015年10月2日(金)〜10月4日(日)公演

〜仙台に根付いた秋の風物詩、  
10周年を迎えた音楽祭は子ども向け公演も充実〜 
                                          
 もはや秋の風物詩としてすっかり定着した仙台クラシックフェスティバル、通称「せんくら」。会期中の3日間は、市内のあちこちにクラシック音楽が溢れます。10周年の節目となった今年は、3日間で延べ約37,400人を動員。チケットは86公演中51公演が完売と、大盛況のうちに終了しました。
 「クラシックって、ちょっと敷居が高いかも……?」そんなイメージを「せんくら」は見事に覆しています。クラシック音楽のイベントとしてこれほど広く支持を得ている理由はどこにあるのでしょうか。今回の取材では、「子ども向け」と冠した公演に注目し、その秘密を探ります。


■「せんくら」とは?
 初めて「せんくら」を訪れた方は、パンフレットを見て思わず眼を疑うことになるでしょう。
 クラシックの“超”有名アーティストをはじめ宮城県内外を問わずさまざまな音楽家、グループが並び、プログラムも名曲揃い。朝から晩まで、3日間で86もの公演が市内の4ヶ所10会場で行われます。チケットは、なんと10002000円という破格の値段で、公演時間も45分または60分に統一。コンサートの「はしご」も出来るように、各会場の公演時間帯がなるべく被らないように工夫されています。さらに、全体のうち約7割のコンサートが、対象年齢の下限を “3歳”に設定しており(!)、“0歳”としている公演も7つ設けています。
 気楽にクラシックを楽しみたい方から、「はしご」をして堪能し尽くしたい方まで。ひとりで音楽に浸りたい方から、家族で楽しみたい方まで。パンフレットを見ただけでも、「あらゆる人のニーズに応えたい」、そして「とにかく気軽にクラシック音楽を聴いて欲しい」、という思いがビシビシと伝わってきます。


■こども向けコンサートに注目
 今回取材させていただいた公演は、音楽祭初日(102日)に行われた、仙台チェンバーアンサンブルによる「0歳からのコンサート」(公演番号14)と、宮城教育大学リコーダーすによる「小学生のための−放課後の音楽室−リコーダーのホントのステキなところ」(公演番号16)の2公演です。


■赤ちゃんもいっしょに、室内楽の響きを堪能
 「0歳からのコンサート」は親子連れで満席。「0歳から」と銘打たれているとおり、まだ生まれたばかりの赤ちゃんもたくさんいらっしゃいました。仙台チェンバーアンサンブルの編成は、ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・フルート・クラリネット・打楽器・ソプラノ。
「まだ小さいのにちゃんと楽しめるだろうか?」そんな不安も、一曲目が終わると同時に消えてしまいました。プログラム運びは「見事!」としか言いようがありません。45分間、全員が演奏に夢中でした。印象深かった3つの工夫を紹介させて頂きます。

その①「一曲の時間は長すぎず。曲間には必ずトークが挟まれる」
 45分で9曲。一曲あたり23分で、曲の前後には演奏される楽器の名前や、曲の聴きどころを面白おかしく説明してくれるので、こどもたちも集中して聴くことが出来ます。
「会場で配布されたプログラムより」

その②「こどもを巻き込んで演奏」
 2曲目が終わったあと、演奏者から衝撃の一言。
「歌っても、踊っても、走ってもいいよ!」
その言葉で、ちょっと緊張気味だったこどもも皆一斉に立ち上がり、思い思いに音楽を楽しむように。「一緒にリズム!コーナー」では、曲に合わせて手拍子。「トントンパッ!」「トンパットンパッ!」。すこし難しいリズムになっても、皆さん完璧にクリアしていました。
 曲のワンフレーズを聴かせて、「これはどんな動物の鳴き声かな?」というクイズもあれば、「どんぐりころころ」を全員で歌うコーナーも。「演奏者のそばで聴いてみよう!」のコーナーでは、こどもたちは我先にと席から立ち上がり、それぞれの場所で楽器を間近で体感しました。

「楽器を間近で体感する子どもたち」

その③「大人も楽しめるプログラム」
 「大人は子どもの付添い」。子ども向けコンサートにはこんなイメージを抱きがちですが、このプログラムは決して子どもだけを対象にしているわけではありません。クラシックの生演奏をゆっくり聴いて、リラックスされた方も多いのではないでしょうか。また、すべての曲がどこかで聴いたことのある名曲で揃えられているので、「たまに耳にすることがあるけど、曲の名前は今回初めて知った」といったようにクラシックの勉強にもなります。最後はソプラノ独唱による「きっと幸せ(お母さんたちへ)」、子育てで忙しいお母さん方を元気づける曲で締められました。
  

■学校で習うリコーダーが魅力的に響く!
 もうひとつの公演は、「宮城教育大学リコーダーず」による「小学生のための−放課後の音楽室−リコーダーのホントのステキなところ」。パンフレットには「ぜひリコーダーをご持参ください!」とあります。

「ステージ上には、『リコーダーの歴史』が展示されている」

 会場はリコーダーを持った小学生たちでいっぱい。公演の一曲目は「ピタゴラスイッチのテーマ」。テレビで聴くメロディーの生演奏に、みんな大興奮。バスリコーダーや、ソプラニーノリコーダーといった、今まで見たことのない楽器にも興味シンシンです。
 こちらの公演にも、さまざまな工夫が随所に散りばめられています。曲紹介はもちろんのこと、リコーダーの解説コーナーや、途中から現れた「リコーダー博士」による世界の笛紹介コーナー(なんと角笛も登場)、さらにリコーダーの裏技テクニック伝授コーナーまでありました。
「会場で配布されたプログラムより」
「リコーダー博士による演奏テクニックの伝授も」

 メインはやはり、小学生全員によるリコーダーアンサンブル。リコーダー博士が出す指示を皆さん完璧にこなします。会場をふたつのチームにわけて、メロディーの追いかけっこにも挑戦。それぞれが忠実に自分のパートに集中して、会場を美しいハーモニーで彩りました。
 公演全体を通して印象に残ったことは、宮城教育大学リコーダーずの皆さんがこどもたちのやる気をとても上手に引き出していたところ。演奏者としてステージにとどまることなく、積極的に客席に向かい小学生とコミュニケーションを取っていました。
 公演終了後は、演奏で実際に使われた楽器の体験会が開催されましたが、来場した小学生のほぼ全員が残って、それぞれが気になったリコーダーを体験しました。

「リコーダー体験に並ぶ子どもたち」


■来場者の方の声を聞きました
Q:子ども向けコンサート」で印象に残った点はありますか?
A:「子どもが楽しめるリズムの曲が多かったし、一曲あたりの時間も短かったのでとても楽しんでいた」
「小さな子どもがたくさんいらっしゃったので、気兼ねせず楽しめた。演奏者のリードもとても良かった」
「こういう公演がもっとあればいいなと思う」


本当に「0歳」のお子様も会場にはいらっしゃいましたが、楽しくリズムを取って楽しんでいたようです。ママ友を誘い合って来られた方もたくさんいらっしゃいました。赤ちゃんもママもみんな笑顔で会場を後にする姿が印象的でした。




主催:仙台市、公益財団法人仙台市市民文化財団、公益財団法人仙台フィルハーモニー管弦楽団、公益財団法人音楽の力による復興センター・東北、株式会社河北新報社、株式会社宮城テレビ放送、仙台市交通局
制作協力:公益財団法人ジェスク音楽文化振興会、株式会社HAL PLANNING